2014年6月13日金曜日

約1万円で自作できるOculusRiftライクなHMD「DuctBox」

きっかけ

OculusRiftは良い。しかし値段が高すぎる。そして、不自由だ。耐え難いほどに。

もっと安い部品と、自らの労働でほぼ同等なものが安く、より自由なハードウェアとして作ることができるはずだ。

そうしてできるHMDはOculusRiftではない。「DuctBox」と名づけた。

備考

以前の記事でOculusRiftライクなHMDを作ったが、今回作成するHMD「DuctBox」はその後継である。部品をより厳選し、費用を安く抑えながら、より作りやすく、より没入感が増すよう工夫を施した。

目的

安価に、かつ可能な限り難しい工程を経ずにOculusRift(DK1)相当の解像度と没入感があるHMD「DuctBox」を作成する。

ただしヘッドトラッカーは省く。一応考えてはいるのでそれがうまくいけば後日別記事で載せる予定である。

必要な部品

7インチで解像度1280x800のLCDディスプレイとそのコントロールボード:約7000円

電圧12Vで電流2A以上のACアダプター:約500円

直径5cm倍率5倍の虫眼鏡x2:約300円x2個=約600円

レンズは驚きのガラス製だ。柄の部分に謎のライトもついてくるが、明るすぎるからなるべく直視しないようにしよう。レンズを取り出した後はライトは捨ててしまって構わない。

A3サイズの黒いスチレンボード:約800円

近所のホームセンターでは200円だったので、多分にネットで買うより現実の店舗で買ったほうがはるかに安い。輸送費のせいか?

防塵ゴーグルゴムひも:約400円+約400円=約800円

もっと金を払っていいのなら、これらの代わりにスキーゴーグルをおすすめする。ゴムひもは百円均一ショップで売っている可能性がある。

500mlのコカ・コーラのペットボトルx2:約150円x2=約300円

そこらへんに捨ててあるものを拾ってくれば無料だ。別にコカ・コーラのものでなくてもよいが、滑らかなものが良い。

ダンボール:0円

Amazonの箱を使えばよい。なければちょっとコンビニまで行って店員に聞けば裏にあるやつを好きに持って行けと言ってくれるだろう。

必要な工具

A3サイズの厚紙の方眼紙、厚めの両面テープ、カッターナイフ、はさみ、ダクトテープ、のこぎり、油性ペン、ボールペン、コンパス、ステイプラー、細めの針金の切れはし

作成の手順

筐体部分の切り出し1

厚紙の方眼用紙から以下の寸法で台紙を切り出す。(写真では二枚切り出しているが、一枚で十分である)

穴については、コンパスで線を引く。

スチレンボードに台紙を置いて、台紙のヘリにそってボールペンで線を引く。板は二枚切り出すが、一枚には中の穴二つぶんについても丸く線を引いておく。

線に沿ってカッターナイフでスチレンボードを切り出す。

一枚は丸く引いた線に沿って穴も切り出す。

組み合わせるときに上手く組み合わさるようにスチレンボードの辺を斜めに切る。

その際、各辺から4.5mmくらいの位置にボールペンで線を引いておき、その線に沿って表面の黒い紙をカッターナイフで切っておく。こうしておくと、斜めに切るときに紙が引っかからなくなり、仕上がりが綺麗になる。

斜めに切るときは、机のヘリがちょうどスチレンボードの端と重なるようにしておけば、ボードの下面を切り過ぎることを防ぐことができる。

これで筐体の前面と背面部分が切り出せた。

レンズの取り出し

虫眼鏡のレンズの枠をのこぎりで溝が出来るように刃を入れる。レンズはガラス製で硬いので横から当てさえしていればレンズを傷つけることはないので安心して切ればよい。

溝ができれば、そこにマイナスドライバーを差し込んで捻る。そうすると枠が割れてレンズが取り出せる。(分かりにくいが、写真中の虫眼鏡の枠に溝が入っている)

レンズの枠の作成

コカ・コーラのペットボトルをラベルが貼ってある平らな部分の下側の境界に沿ってカッターナイフで両断する。

さらに、平らな部分が2cm程度残るようにハサミで切る。

レンズを口のあるほうに入れて、水平になるように調整する。(写真は平らな部分をまだ切っていないが、切っていたほうが入れやすい)

レンズの上のヘリに沿って外側から油性ペンで線を引く。ペンを当ててペットボトルを回転させるとやりやすい。(写真では上下のヘリで二本引いているが、上の一本だけでよい)

ペットボトルの口の部分をカッターナイフで切除する。この時、先ほど引いた線から1cm以上空けて切るようにする。

写真のように線まで5mm程度の間隔を空けて二本の切込みを入れてから、2回折る。

2回折る理由は、最終的に図の様に折った部分でレンズを固定するためである。

同様にさらに二箇所、最終的に三箇所が配置的に均等になるように(厳密に均等でなくてもよい)これを行う。

レンズを試しにはめ込む。かなりガッチリと固定されるはずである。どうしても入らない場合は切り込みを少し深くして再度折り込み、調節する。

レンズを外して、切込みを入れた方の枠を切って小さくし、切り込みで出来た尖った部分を切って丸くする。言葉だと分かりにくいが、写真のようにすればよい。(写真はレンズがはめ込んであるが、切るときは外したほうがやりやすい)

ヘリを小さく、角を丸くする。上の写真と見比べてほしい。

もう一度同じことを行って、同様なレンズの枠をもうひとつ、計二つ作る。分かりにくく難しそうに見える工程だが、分かればそこまで難しくない。

平らな部分の境界まで適当な間隔で複数の切り込みを入れて、写真のように切り出したスチレンボードの穴にはめ込む。(写真ではスチレンボードのヘリが斜めに切られていないが、本当はこの時点では切られている)

表はこのようになる。

そして、ダクトテープで貼り付ける。

ディスプレイ面の作成

ディスプレイの背面のコネクタ部分が露出するようにスチレンボードにカッターナイフで四角く穴を開ける。

その際、写真のようにコネクタを差し込む方向に大きめにスペースをあけておくことで、コードにかかる曲げ方向の負荷を減らすことができる。

厚い両面テープでディスプレイを貼り付ける。

ただし、ディスプレイの表示部はディスプレイ本体の真ん中には位置していないことに注意すること。ディスプレイ本体ではなく、ディスプレイの表示部がスチレンボードの中心に来るように貼り付ける必要がある。(図はディスプレイ本体とディスプレイ表示部の位置関係を誇張して描いたものである)

奥行きの調節

筐体の側面部のサイズを決定するために、立体的に調度良く見える位置を計測する。動画はこれを使った。

この奥行きは人によって異なる。複数人で計測したところ、5cmから8cmまで幅があった。側面部は完成した後でも交換できるので、とりあえずアバウトに測ってHMDを先に作ってしまうのも手であろう。

本当は後で簡単に変えられるような構造にするべきだ。一応考えてはいるので、今後の改善に期待されたい。

筐体部分の切り出し2

筐体部分の切り出し1で行ったように、今度は側面のスチレンボードを切り出す。サイズは(先ほど計測した奥行き)x 13cmと(先ほど計測した奥行き)x 18cmであり、それぞれ二つずつ切り出す。

辺を斜めにカットするのも忘れないこと。

ゴーグルの細工

防塵ゴーグルのシールドを取り除く

防塵ゴーグルの細いゴムバンドを外し、代わりに用意しておいた幅広のゴムバンドをステイプラ−でとめる。

組み立て

ダクトテープで筐体を組み立てる。

ディスプレイのコントロールボードは両面テープで貼り付ける。

写真のように防塵ゴーグルとHMD筐体に穴を空けて針金で両者を固定する。

後はお好みで外から光が入らないようにダンボールの切れ端で周囲を囲めば完成である。

まとめ

前回の問題点だった、「レンズと目との距離が離れすぎているために視野角が狭い」ことは、ペットボトルをうまく使うことで解決できた。

また、「埃が入り込んで画面に張り付く」問題も密閉することで解決した。「ダクトテープの臭いがひどい」問題もある程度は改善した。

「箱を作るのがめんどくさい問題」は方眼型紙を使って別個に箱の各面を切り出すことで、ある程度作成工程が簡単になったので解決できたと言えるだろう。

「直径5cmで倍率5倍のレンズがなかなか手に入らない」は依然として日本国内ではそうだが、ebayで買えば良いことが分かった。

ただし、「レンズ間の距離が人によって異なり、合わないことがある」問題の解決は諦めた。しかしながら、レンズの特性からか、今回の場合はそこまで問題ではないようだ。

既知の問題点とその解決案

丁度良い奥行きが人によって異なる

筐体の箱を二重にしてスライドして調節できるようにすれば良いが、その場合は固定の問題がある。

隣の画面が見えてしまう

そこまで気にならないが、隣の画面が部分的に見えて画像が端の方では二重に見える。レンズの内側部分を1cmほど覆うと解決するが、見た目が悪くなる。

一部の部品が特定の企業(コカ・コーラ社)に依存している

特定の企業に部品が依存しているのは良くない傾向である。レンズを固定するために丁度良いプラスチック、ないしはそれと似た一定の強度を持ちつつ加工しやすい素材で出来た円錐形のものが身近にあれば良いのだが。現時点で良い解決法は思いつかない。

ただ、3Dプリンタの普及がこの問題を解決する可能性がある。

謝辞

写真を撮ってくれただけでなく、斜めカットやコントロールボードとの接続についてアイデアをくれ、他にも様々な形で協力してくれた師匠と、手製のスコーンを差し入れてくれたY氏、計測についてシニカルに的確で有意義な指摘をくれたT氏、通り過がりで計測に参加してくれたI氏と見知らぬ人たち、その他の協力してくれた人、そしてこの記事を読んでくれたあなたに感謝する。

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